日本各地に眠っている固定種や在来種を求めて、
古くからその場所で受け継がれてきた野菜のルーツを巡る旅。
「Native Seed Travel」。
その第一弾として、12月半ば、
寒さが厳しくなる本州から少し離れ、
私たちが訪れたのは、沖縄県は宮古島。
宮古島でオーガニックファームを営む農家さん、
島で育まれてきた伝統野菜と
その魅力をご紹介します。
宮古島のオーガニックファーム
今回、固定種や伝統野菜を栽培している農家さんを探し、
突然な申し入れにも関わらず、快く見学を受け入れてくださった
「sumaya natural farm (スマヤナチュラルファーム) 」さんへお邪魔しました。
待ち合わせ場所に、軽トラックで迎えに来てくださったオーナーの須磨北雄(すま ほくゆう)さんに案内され、さとうきび畑を抜けると……
そこには、多種多様な野菜が栽培される優しい畑が広がっていました。
畑に降りたった私たちはしばらく、宮古島に吹く柔らかな風と背景に広がるさとうきび畑が生み出す景色に見とれてしまった。
一目でわかる、決して独りよがりではない畑。
かつて、サンゴ礁が隆起して生まれた宮古島の土壌は、ミネラルが豊富で、雨が沢山降る時期は水分を含みやすい、粘土質の赤土。
赤土だと、作る作物も限られ、栽培は難しいと聞いていたけど、須磨さんに伺ってみると「うーん、確かに難しい面もあるけど、そんなことはないかなぁ…」との返事が。
その言葉を聞いた時、須磨さんがこの宮古島という場所で気候や環境を理解しながら、土壌に合わせた農業を実践してきた時間の層のようなものを感じました。
須磨さんは一つ一つ丁寧に案内して下さり、せっかくだからお芋掘りしてみましょう、と「大薯(ダイジョ)」と呼ばれる沖縄伝統の山芋を収穫体験させてくれました。
ダイジョは、長芋と同じヤマノイモ属の仲間で山芋の一種で、主に沖縄、奄美地方や九州の南部で栽培されています。かつて台湾から沖縄に伝わったとされる伝統野菜で「台湾山芋」や「沖縄山芋」とも。
大きさやサイズがまちまちであることや、温暖な土地でしか育たないため、本州では流通しておらず、市場でも見かけることはありません。
収穫を終えると、採れたてのダイジョを須磨さんが新聞紙に包んでくれ、 トラックでお会計。
自然栽培という定義が曖昧になりつつある昨今、作り手の方と一緒に畑を巡り、自ら収穫をして、その場で購入する直売スタイルは、次の販売スタイルの移行への大きなヒントである気がしました。
スーパーマーケットやインターネットで野菜を買うことが当たり前になっている私たちにとって、畑で野菜を買うという行為は、どこか懐かしさも感じるような、そして、次世代の食育にもつながっていくシステムだと思います。
日本の在来馬との思わぬ出会い
一通り、畑を見学した後、須磨さんから「せっかくなんで、宮古馬(みやこうま)を見ていきませんか?」という素敵なお誘いが。
宮古馬とは、一時は19頭にまで減少してしまったという沖縄県の天然記念物にも指定される日本の在来馬。今回、その宮古馬がいる牧場へ案内してくれました。
琉球王朝時代、王様の公用馬として活躍していたという宮古馬。
通常の馬より蹄が大きく、砂利道やデコボコの道を歩いても安定することから、王様の乗る馬として用いられたといいます。
須磨さんが馬を見つめる目はとても優しく、そこに言葉はなくとも、馬たち自身も何かを理解しているかのような落ち着いた瞳がとても印象的でした。
また須磨さんは、この絶滅危惧種である宮古馬のお世話をしながら、馬糞を利用した堆肥作りにも挑戦しています。
「宮古馬の馬糞を使わせてもらって、その結果、宮古馬の保護にもつながるような野菜作りができたら」と須磨さん。
馬糞から作られた堆肥は、牛糞や鶏糞のような臭みがなく、土の良い香り。
発酵を通した、生き物と人間の循環サイクルの理想がここには在りました。
毎年、開発が進む宮古島とは反対に、古くから受け継がれてきた日本人の循環の思想。
自然とコミュニケーションを取りながら、動植物と共生・共存していくような生き方を実践されている須磨さんの飾らない人柄が素敵でした。
最後に、なぜ伝統野菜や固定種を中心に育てようと思ったんですか?と伺ったところ、
「宮古島のおばあでも知らない伝統の島野菜が意外とあるんだよ。島内でも固定種で商売をしている農家さんも多いとはいえないし、どうせなら他の人がやっていない方が面白いよね。」と須磨さん。
「sumaya natural farm」では、今年から自然栽培でマンゴーの栽培にも挑戦するといいます。
宮古島を訪れる際には、ぜひFacebookをチェックしてみてください。
https://www.facebook.com/SumayaNatural
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