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タネの基礎知識、遺伝の法則とF1品種

更新 2022.1.4

 

遺伝子という言葉を聞いたことがあると思います。
どこかややこしくて、今まで興味のなかった人が多いのではないでしょうか。今回の記事では、できる限りわかりやすく遺伝子の仕組みについてまとめています。

形質と遺伝

まず、生物の持つ形などの特徴を「形質」といいます。 この形質が子孫に伝えられることが「遺伝」です。遺伝する形質の元となるものが「遺伝子」であり、細胞の中心「核」の染色体の中にあります。 遺伝子は基本的に両親からそれぞれ形質を受け継ぐ仕組みになっています。

例えば、人間の親子には、髪色や目の色など、同じような特徴が現れます。例えば、血液型はA型とO型の間に生まれた子はA型が生まれやすくなります。黒髪の日本人の男性と、金髪の北欧の女性が結婚すると、不思議なことに二人の間には兄弟全員に黒い髪の子どもが生まれます。

この遺伝の関係は、人間だけでなく、植物も同じです。

「遺伝子」という言葉が生まれる1世紀近く前、オーストラリアの修道院の司祭だったグレゴール・ヨハン・メンデル(Gregor Johann Mendel, 1822-1884)という人物が「遺伝の法則」を発見しました。メンデルは、修道院の庭にエンドウ豆を植え、その種子の形やシワ、種皮の色などの形質の遺伝を調べる交配実験をしたことで有名です。

メンデルは、オーストリア帝国・ブリュン(現在のチェコ・ブルノ)の司祭。

メンデルが発見した遺伝の法則には3つあり、「優性(顕性)の法則、分離の法則、独立の法則」をまとめて「遺伝の法則」といいます。

メンデルが生きた時代は、「遺伝子」の仕組みは解明されておらず、遺伝子は液体状になっていて、親の形質は混ざり合って子孫に伝わるものだと考えられていました。これは「融合説」と呼ばれています。しかし、当時、両親と異なる目の色や髪の色の子が産まれるれてくる理由を説明できる人はいませんでした。

そんな中、メンデルは、遺伝子とは「液体」が混ぜ合わせるようなものではなく、「粒のような因子」のようなものが組み合わさることによって子孫に受け継がれると考えて「粒子説」を唱えました。当時はこの考え方は理解されず、メンデルの「遺伝の法則」は、死後に再発見されました。

DNAの存在が発見されたのは、1869年。スイスの生物学者フリードリッヒ・ミーシェル(Johannes Friedrich Miescher,  1844-1895)が膿の細胞抽出液から発見しました。

メンデルの実験

メンデルが「遺伝の法則」を発見するにあたって革新的だったことは、エンドウ豆の「純系」を用いて実験したことでした。この着眼点によってメンデルは、世紀の大発見ができたといわれます。

「純系」とは、犬でいうところの血統書付きの純血種のようなものです。

メンデルは、実験に使うエンドウが絶対に「純系」であることを確立してから実験をはじめました。まず丸いエンドウ豆とシワのあるエンドウ豆の品種を確立し、それぞれの花粉を人工的に「受粉」させました。つまり、メンデルは種類の異なる純系の個体同士を交配させて「雑種」を作ったということです。

左:純系の丸いエンドウ豆。右:「マローファット」と呼ばれるシワがあるエンドウ豆

メンデルは、両方のエンドウ豆を育て、人工的に授粉させることで、その雑種がどのような種をつけるかを観察しました。結果、丸いエンドウ豆とシワのあるエンドウを交配させましたが、雑種の個体からはシワがある種子は出来ませんでした。

次にメンデルは雑種同士を人工受粉させてみました。すると次の2世代目では、丸いエンドウ豆とシワのあるエンドウ豆の両方が実ることが分かりました。

メンデルは、実験で純系同士から作られた雑種第1世代で現れた形質を「顕性(優性)」と呼ぶことにし、現れなかった形質を「潜性(劣性)」と呼びました。このように、交配によって生じた雑種第1世代目では、優性形質だけが現れ、潜性形質は潜在しているだけで形質として現れません。これは「顕性(優性)の法則」と呼ばれます。

遺伝学では1回目に交配した雑種のことは「F1世代」と呼びます。「First Filial Generation」という単語の略です。

メンデルは、他の花の色や種子の色の純系の形質についても調べましたが、いずれも実験で選んだ形質がすべて顕性か潜性のどちらかの形質を示しました。

雑種を作る実験結果から、メンデルは、1回目にエンドウが雑種になったときに現れなかった潜性のシワの形質が、雑種第2世代では再度現れたことについて研究を深め、雑種2世代で起こった現象を「分離の法則」としました。

現在、「分離の法則」の仕組みは「減数分裂」という生殖細胞が合体して新しい個体を作る時に遺伝子が分離する過程があることが明らかになっています。

「分離の法則」があることが分かったメンデルは、次にエンドウ豆の形と色の2つ以上の遺伝子が関係した場合について調べました。メンデルは、丸く黄色のエンドウ豆とシワのある緑のエンドウ豆を人工受粉しました。すると「顕性の法則」の通り、雑種1世代目はすべて丸く黄色のエンドウ豆になりました。

この実験結果から、黄色のエンドウ豆が「顕性」、緑色のエンドウ豆が「潜性」。丸いエンドウ豆が「顕性」、シワのあるエンドウ豆が「潜性」ということが分かりました。

さらに、雑種同士を全て人工授粉させると、2世代目は、下記の図のように、およそ形質が「9:3:3:3:1」の割合になる結果が得られました。

「顕性の法則」に従って、2世代目の形質の現れ方をマス目で考えると、下記のような図になります。

遺伝子の組み合わせが異なっていても、9つは「黄/丸」の種子、3つは「緑/丸」、3つは「黄/シワ」、1つは「緑/シワ」になります。

このように、遺伝子はそれぞれが別々に分離すると考えれば、形や色を決める遺伝子は別々であること(独立している)が分かります。この遺伝の仕組みをメンデルは「独立の法則」と呼びました。

その後、メンデルは実験結果を『植物雑種の研究(1866年)』という論文にまとめましたが、遺伝の法則の真価が認められるようになったのは35年後のこと。メンデルの法則は、ド・フリース(Hugo Marie de Vries, 1848 – 1935)、コレンス(Carl Erich Correns, 1864-1933)、チェルマク(Erich von Tschermak-Seysenegg, 1871-1962)の3人によって1900年に再発見され、これが近代遺伝学幕開きの契機となったのです。

F1品種のつくり方

現在、スーパーなどで出回る野菜(マメ科やキク科やレタスを除く野菜)はメンデルが発見した「遺伝の法則」を利用しています。本来、植物は、様々な環境に適応した子孫を作るために、バラバラな性質の種を作ろうとします。しかし、生産者は野菜を作る上で、形質がバラつくと都合が悪く、収穫管理を行う上では形質が揃う方が良いです。

例えば、大根の場合、生育状況にもよりますが、基本的に病害虫に強く、サイズが規格通りに揃いやすいことで、箱詰めしやすくなり、均一価格で売りやすくなります。外食産業にとっても規格通りの野菜は、機械調理に適していて作業効率も向上します。F1品種は市場のニーズに合わせたり、農産物のサイズを揃わせる目的では極めて優秀です

次回は、「自家受粉」と「他家受粉」の違いをご紹介します。
こちらのリンクをご覧ください。

参考文献:
『たねのふしぎ』岩崎書店
『今さら聞けない タネと品種の話 きほんのき』農文協
生物学日誌 https://seibutsujournal.com/mendels-laws/

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