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トマトの歴史と自然農の栽培方法

更新 2022.4.7


トマトは南米アンデス山脈の高地が故郷。
元々は、メキシコで栽培が始まり、紀元前1,000年程に栽培品種になったと考えられています。日本に渡来したのは室町・江戸時代と伝わります。狩野探幽によって1668年に描かれた『草花写生図巻』では、当時のトマトが分かります。

東京国立博物館所蔵「デジタルアーカイブス」:
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0005823

世界には、数千種類以上の品種が存在しており、世界最大の生産国は中国。年間約5,600万トンの生産量を誇ります。 インドは年間生産量約1,800万トンの世界第2位。 日本は約70万トンで26位です。

トマトは乾燥、強い日光、昼夜の温度差が大きい気候を好むナス科の果菜類ですが、元々は、ミュータント(突然変異)の作物です。原種であるトマトは、全て小さなミニトマトでした。現在では「マイクロトマト」として流通しています。

原種のマイクロトマトは、メキシコでは食用されていましたが18世紀頃までは観賞用として栽培されていました。そのため、大きな実をつける突然変異の一株が大切に増やされて、地域ごとに分化し、現在のように世界中で食されるようになったと考えられています。19世紀ごろにトマトは世界中で広まり、ソースやケチャップとして欧米の間で定着しました。

現在の大玉トマトは、16世紀にスペインがアステカ帝国を征服して、新大陸の産物をヨーロッパに持ち込んだ際に、突然変異が起きて生まれたそうです。

直径が1cm程しかない「マイクロトマト」。
原種のトマトに近いと考えられています。

野口種苗さんの書籍『固定種の種と育て方』のコラムよると、1935年の野口種苗の仕入帳簿に「ポンテローザ」や「マグローブ」という輸入トマトを仕入れていた記録が残っているそうです。おそらく大正末から昭和初期にかけて少しずつ日本にもトマトを食べる文化が定着していったと考察されています。

日本で主流となっている桃色トマトの元祖と呼ばれる歴史ある固定種「ポンテローザ」。

日本のトマトで有名な品種は、タキイ種苗さんが開発したF1品種「桃太郎」。桃太郎が発売される以前のトマトは、果実が柔らかく、赤く熟してから出荷すると輸送中にすぐ傷んでしまいましたが、「桃太郎」は、赤く熟してから出荷しても傷まないように改良されました。

初代「桃太郎」は、父親に「強力米寿」という品種とアメリカのミニトマトを何度も戻し交配を行ったものを使い、母親に「フロリダMH-1」という硬いアメリカトマトと「愛知ファースト」を掛け合わせたものを使ったそうです。

その後、ハウスでも栽培しやすい品種「ハウス桃太郎」や連作障害に強い品種「桃太郎T53」等が開発され、現在でも「桃太郎」が日本の出荷トマトの多くを占めるようになりました。

固定種では、岐阜県の奥田春男さんが5年以上かけて「桃太郎」から甘いトマトを選抜して固定した「アロイトマト」が有名です。長崎県雲仙市の種採り農家の岩崎政利さんが3年がかりで作った「岩崎アロイ」などもあります。

自然菜園コンサルタントの竹内孝功さんの著書「これならできる!自然菜園」では、おすすめ品種としては下記があげられています。

ミニトマトシュガーランプブラックチェリーマッツワイルドチェリー
中玉トマトサンマルツァーノグリーンゼブラ
大玉トマト自然生え大玉麗夏

昨年、育てた「マッツワイルドチェリー」。直径1cm程度の極小のメキシコに由来する固定種のミニトマト。無肥料の放任栽培で勝手に実がなります。
松尾種苗さんのWebサイトによると、日本のミニトマトの品種はほとんどがF1品種と記載されていました。
わが家では1992年に発売され、現在も残っている貴重な固定種「ステラミニトマト」を育てています。無肥料でも育ちやすく、甘くて美味しいです。

トマトの栽培方法

トマトの生育適温は、昼間25℃、夜間15℃。低温には強いが、夏の高温に弱い面があります。藤の花が咲く頃に定植すると良いとされます。

直播きも可能ですが、トマトは育苗するのが一般的です。

トマトは、乾燥ぎみを好み、過湿を嫌うため、畝はできるだけ高畝にして水はけをよくします。水はけの悪い畑では、通路に緑肥作物を撒き、株間に枝豆を混植することで蒸散性を高めて過湿を防ぎます。

トマトの原産地は乾燥地帯であるため、トマトは無数に枝葉を出し、地を這うように生育しています。地面に着いた節から写真のように根を出して1本のわき芽が独立して生長します。

地面に近い節からは根が出てきます。茎の薄い産毛は、朝露などわずかな水分を逃さず吸収するためと考えられています。

現在の生食用に開発された品種は、地這いや枝葉の摘心をしないと、過湿になる雨の時期に過湿ぎみになり成長バランスが悪くなると言われます。そのため、最初の第1花房が咲くまで、わき芽は取らずに伸ばしたままにしておくのが一般的です。わき芽処理の方法を記載していますので、ご参考になれば幸いです。


大玉トマトは、第1花房真下の強いわき芽を1葉残して、1本仕立てにします。


第1花房の開花時に、ミニトマトや中玉トマトは、第1花房真下の強いわき芽を一本残して2本仕立てにします。ミニトマトは、2本仕立てにすることで、根の本数も倍になり、樹と実の勢いのバランスが良くなります。
支柱には、竹・麻紐を活用して仕立てています。

トマトのコンパニオンプランツ

竹内孝功著『野菜の植え合わせベストプラン』を参考にコンパニオンプランツを実践してみました。

落花生
トマトと同じ南米アンデス山脈出身のマメ類。根に共生する微生物が空気中の窒素を固定してくれます。また横に広がっているため草マルチの役割も果たしてくれます。実際に落花生は試しにしてみましたが、なかなか雑草を抑えるのは難しかったです。

雑草の中に落花生の葉が紛れるので、草取りが難しかったです。

バジルイタリアンパセリ
土壌の養分や水分を吸い取っての生育をトマトを促します。また強い香りで多くの虫除けにも役立ちます。トマトとの料理の相性も良いです。こちらは、トマトの近くでよく育ちました。

ニラ・葉ネギ
トマトと根を絡ませて育ち、根に共生する拮抗菌が分泌する抗生物質の働きによって病気を予防します。トマトの定植時に一緒に植えるのがコツです。

エダマメ
落花生と同じく目に矯正する根粒菌が空気中の窒素を固定します。トマトの株間に早生品種を植えると余分な水分を吸ってくれます。一緒に収穫できるのも嬉しいです。

前後作に良い作物

キャベツ・ニンニク
トマトとキャベツは交互に育てることで毎年育ちが良くなると言われます。ニンニクはトマトの連作障害を予防します。

相性の悪い作物

ジャガイモ
アンデス山脈の安でも育つじゃがいもはほとんどの野菜と相性が悪いです。言い伝えでは故郷アンデスの古代都市マチュピチュでは他の作物が混ざらないように隔離して育てられていたと伝わります。混植はもちろん前後作も厳禁です。¥

トウモロコシ
日当たりと水はけの良い畑が好みます1メートル以上の深さまでではあり貪欲に水分を吸い上げます。しかし、背が高く育つので、日陰を作ってしまいトマトと相性が悪いです。

近年では、仕立てやわき芽摘みを一切せずとも育つ品種も開発されています。写真は、種苗店で見かけた「ジャングルトマト」という品種。

トマトの自家採種

トマトは、他の品種との交雑は極めて少ない自殖性植物です。自家採種では、異品種と数メートル離せば、交雑を防ぐことができます。またトマトの種は長命種子なので、低温・乾燥状態を保持すれば、5年程度は発芽率を保つことができます。

1.収穫から1週間ほど追熟させて、水分が入らないよう、種とゼリーをかき出す

2.ビニール袋に密閉し、1-2日発酵させる

3.洗濯ネットで水洗いし、水に沈んだ種を選別する

2-3日に日向で乾燥させる

参考文献:
創森社『自然農の野菜作り』 高橋浩昭著
農文協『これならできる!自然菜園』竹内孝功著
ワン・パブリッシング『野菜の植え合わせベストプラン』竹内孝功著
農文協『これならできる!自家採種のコツのコツ』自然農法国際研究センター

参考サイト:
https://www.matsuonouen.net/?pid=148179310

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